市立小樽美術館 市立小樽美術館協力会

KANCHOの部屋

小樽 美術家の現在シリーズ1 小川清/鈴木吾郎展

op-2[1] 8月に入って北国のマチ小樽も暑い夏の日が続いています。今年で40回目の年輪を刻んだ真夏の一大イベント小樽潮まつり(7月28日~30日)が例年にない盛り上がりをみせ、その熱気が連日の猛暑を誘ったのかも知れません。
  市民の憩いの場を自認する市立小樽美術館では「北海道 海のある風景 山のある風景」展に続く今年度の特別 展第2弾となる「小樽 美術家の現在」シリーズ1として画家小川清と彫刻家鈴木吾郎の2人展(7月29日~9月18日)が開かれています。この企画展は小樽在住の現役の作家を2人展形式で今後5年間のシリーズで紹介していこういう狙いで、今回はその第1弾というわけです。
 1934年小樽生まれの小川清は、愛着の深い地元小樽の風景を描き続ける油彩 画家です。みなと小樽の運河、坂道、路地、古い屋根の続く眺望などをモチーフに、茶色を主体とした作品をあくこともなく制作してきました。道展、創元会展などへ出品、道展協会賞受賞後は中村善策の誘いで一水会展に出品し、数々の受賞を経て同会会員になった(1989年退会)経歴の持ち主です。歴史を重ねた小樽の街をくまなく歩くことで見つけ直し、独自の風景画のありようを確立した作家です。また、市民に親しまれるタウン誌「月刊おたる」の表紙画を担当して450点を超え、小樽の魅力を伝え続けています。
op-1[1]  今回は1964年(昭和39年)製作の「ガード横丁」から2005年製作の「休日の漁港」まで40年余の画業を、年代を追って選び抜いた油彩 27点と、同時にスケッチや「月刊おたる」も展示しました。「小樽運河」「中央埠頭」「船見坂」「荒巻山」「崖の建物」など、小樽っ子にとってはおなじみの季節折々の風景がしっかりとした情感とともに楽しめる展覧となりました。

  一方、1939年芦別生まれの鈴木吾郎は道立札幌西高校から北海道学芸大学(現北海道教育大)札幌分校特設美術科に進み、藤川叢三に師事、1960年から道展を主舞台に活躍する作家です。人体像の彫塑作品を制作し続ける鈴木は、これまで全道各地に50基を超えるモニュマンを残す作家ですが、教職の身で道内を転々、1980年代の道立小樽潮陵高校勤務の縁で小樽に居を定めました。その後、母校の道立 札幌西高校美術教諭の最後に1995年に教職を離れ、彫刻製作に専念する生活に入りました。
  今回は1970年代から2005年までに製作したブロンズ、FRP(合成樹脂)テラコッタ(素焼き)などの作品42点と、デッサン10点並びましたが、中でも最近作の健康的で柔和なテラコッタの女性像の魅力が見どころかと思われます。 ともに居を定めることで小樽にこだわる2人ですが、その2人の作家のあり方は作品製作の上で対照的に見えます。というのも、そのモチーフが1人は風景にこだわり、そしてもう1人は人物にこだわるという対照性がこの展覧会を興味深いものにしていると思うのです。
  小川清の作品群は風景画といっても海、山などの自然ではなく、港、運河、工場、市場、家並み、坂道など人間の営為としての構築物であり、人物はほとんど登場しません。かわって鈴木吾郎の作品群は人物の微妙な表情や姿態、しぐさにただよう情感の追求がテーマと思われ、その2人のコントラストがこの展覧を豊かなものにしていると思うのです。
  合わせて当館常設の中村善策、その軌跡「季節を描く」は、1914年製作の「海景」から1980年製作の「雪もよい」まで21点が壁面を飾っています。小川清展と見比べてみるのも一興かとおすすめします。

▲pagetop