市立小樽美術館 市立小樽美術館協力会

KANCHOの部屋

「吉川千香子展オープン」

 「吉川千香子 土と火の遊び―無邪気な(非)器たち」展がオープンしました。

小樽生まれの吉川は高校卒業後上京し、武蔵野美術大学で彫刻を学びますが、常滑で出会った大甕に強く惹かれて陶芸に転向、以来独学でこの道を歩み続けてきました。

 活動は全国各地、さらに海外での個展が中心です。作品は器から人形、動物、椅子、テーブルなど多岐にわたります。

ろくろではなく、おもに手びねりによって作られるその作品は、どれもが子どものように天真爛漫で自由な造形を示しています。白磁に映えるカラフルな色彩もユニークな魅力です。

 展覧会名には「(非)器」というサブタイトルがついています。実際、展示されている作品は動物や人形がほとんどですが、吉川が手がける器も、把手が動物の形だったり、お皿に描かれた動物の絵に合わせて間仕切りが立ち上がっていたりと、いわゆる機能本位の器とは対照的なものばかりです。

 そのユニークな器を初めて見たとき、私は岡本太郎の「坐ることを拒否する椅子」を連想しました。岡本も座りやすさだけを追求した機能一辺倒の椅子を嫌い、顔がついていたり、凸凹があったりする、むしろ坐り心地の悪い椅子を制作しました。「人間と対等づら」をした椅子を作りたかったのだと語っています。

 吉川の器も単なる使いやすさではなく、駄々をこねたり、何かを語りかけたり、「人間と対等づら」をして、共に食事を楽しむメンバーとして作られているのではないでしょうか?

 ここに掲載した展覧会チラシは「心意気博物館」で撮影されたものです。当協力会の秋野治郎会長の私設博物館で、実家の薬局を改造し、小樽商人の心意気を示す印半纏や家具、スキーなど先人の暮らしを伝えるために作られました。実は秋野・吉川両氏は幼馴染。どちらも老舗商家でご近所同士だったのことです。

 個性的でカラフルな吉川作品ですが、ご覧のとおり、築135年超の古民家にもしっくりとマッチしています。これは作品にも空間にも暮らしの息づかいや手触りが込められていて、人間のように交感しているからかもしれません。

 展覧会場でも心意気博物館所蔵の古い家具とともに展示していますので、この雰囲気を味わっていただけるものと思います。ぜひお越しください。

苫名 真

 

 

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