市立小樽美術館 市立小樽美術館協力会

KANCHOの部屋

「後志美術散歩」

 市民の皆さんと美術館を巡るバスツアーに行ってきました。これは協力会の助成も得て隔年で開催しているもので、今回は後志管内を回りました。比較的近場のコースですが応募は多く、高い倍率の抽選を行い、定員いっぱいの40名の方々にご参加いただきました。

 この地域にはユニークな美術館や文学館が5館、4町にまたがって点在しています。岩内町の木田金次郎美術館と荒井記念美術館、共和町の西村計雄記念美術館、倶知安町の小川原脩記念美術館、そしてニセコ町の有島記念館です。羊蹄、ニセコの秀峰と裾野に広がる雄大な田園風景、そして荒波砕ける日本海。変化に富んだ景色を楽しみながら地域ゆかりの芸術施設を訪ねる周遊ルートは25年以上前に「しりべしミュージアムロード」と名づけられ、今ではすっかり定着しました。5館は共通のテーマのもとで毎年同時期に共同展を開催するなど、活動においても結びつきを深めています。

 今回は旅程の都合で、この5館の中から3つの個人記念美術館を訪問しました。最初に訪れたのは小川原脩記念美術館です。小川原は日本におけるシュルレアリスムの旗手として活躍したのち戦後は郷里倶知安に戻って画業を深め、やがてチベットやインドをテーマにした滋味あふれる世界へ到達した北海道を代表する洋画家です。ちょうど小川原を中心に創設された後志のグループ展「麓彩会展」の開会式直後で、出品作家のアーティストトークを聞き、また小川原の「麓彩会展」出品作について詳しく解説していただくことができました。

 次に向かったのは岩内町の木田金次郎美術館です。木田は有島武郎の小説「生れいづる悩み」のモデルとして知られています。現実においても、有島の助言を受けて岩内の地を終生離れず、漁師を続けながら絵を描きました。激しく奔放な色彩やタッチは、日本海の厳しい自然とじかに向き合うことから育まれたものです。岡部卓館長に開催中の「木田金次郎と岩内美術100年の水脈」展をじっくりと解説をしていただき、木田芸術の魅力に加え、岩内に根付いた美術の伝統についても理解を深めることができました。

 最後に訪れたのは西村計雄記念美術館です。共和町(当時は小沢村)出身の西村は戦後フランスに移住し、40年以上にわたってパリ画壇で活躍。柔らかな色彩とたおやかな曲線による抽象画は東洋と西洋の美の融合であると高く評価されました。学芸員の佐藤瑞起さんにお話をうかがい、ユニークな抽象絵画が生まれた背景や作品に込められた意味などについて深く知ることができました。

 3人の画家の代表作をじっくり鑑賞するとともに、彼らが生まれ育った場所に実際に赴くことで風土との結びつきも感じられ、充実した美術散歩になったと思います。
お忙しい中ご対応いただいた各美術館の皆様に心からお礼申し上げます。参加者の皆様はハードなスケジュールでお疲れになったと思いますが、次回もご応募いただければ幸いです。

苫名 真

 

 

 

 

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