市立小樽美術館 市立小樽美術館協力会

KANCHOの部屋

秋から冬へ

 だれが、いつごろから言い出したものか。「文化・芸術の秋」。今秋も小樽美術館をはじめ市民会館、生涯学習プラザ、 市民センターなど4会場を舞台に「平成25年度 第64回市民文化祭」(9月26日~11月3日)が開かれ、多彩 なプログラムが繰り広げられた。当美術館会場に限って開催されたプログラムを挙げると、文化祭開幕を告げる美術市展(公募展)を皮切りに、盆栽展(同)、愛石展、小品盆栽展、書道市展(同)、小樽ユース展(同)、書遊展、山草展、合同華展、和紙ちぎり絵展、お茶会(裏千家淡交会)、菊花展(公募展)、 写真市展(同)と続く。他会場でも映画、俳句、短歌、川柳の各大会や「民謡・芸能のつどい」「小樽ウィンド・アンサンブル&フラダンス」などのイベントも組まれ、小樽市民の趣味を含めた文化度の多彩さと奥深さ、そして歴史を感じさせてくれた。
keiji-sj16[1] さて、当美術館のこの秋のニュースを1つ。旧国鉄手宮線跡地に面 して広がる美術館・文学館前の色内広場に10月1日、愛くるしいブロンズの少女像がデビューした。小樽ロータリークラブが創立80周年を記念して寄贈となったもので、作品は小樽市在住の 彫刻家鈴木吾郎氏の手になる「少女十六歳」=写真=。多くのロータリアンや作家、市教委関係者が集まる中で1日除幕式が行われたが、その後同広場を訪れる子供たちが手を触れる姿や市民、観光客がカメラを向けるなど、人気スポットの様相だ。残念ながら 積雪を見て冬囲いの必要があり、2月の「小樽雪あかりの路」の主会場の1つとなる色内広場でのお目見えは叶わない。ただ、この広場の野外彫刻の少女像が第1号となり、2号、3号の登場を期待したい。
 いま開催中の今期の特別展第3弾は「北の水彩画人 白江正夫と宮川美樹」展(~2014年1月26日)である。小樽在住の 白江正夫(1927年~)と岩見沢を拠点に活動する宮川美樹(1937年~)はともに北海道美術協会(道展)日本水彩 画会 (日本水彩展)の会員として活躍する現役作家。道展、日本水彩 展を中心に制作発表、北海道を代表する水彩画家として ゆるぎない存在感を示している。日本水彩画会では白江が1987~1995年北海道支部長を務めたあと宮川が現在同職を継ぎ、 道水彩画界を索引する役割を担っている。透明と不透明を自在に操り、線による力強く簡潔な絵作りの白江と、驚異的な リアルさで細密描写に徹する宮川とは、その表現手法は好対照を見せている。今回の展示作品は道展、日水展出品作を中心に 制作年を追って白江27点、宮川26点を厳選。詩人でもある宮川は1984年発行した「宮川美樹詩画集」の原画12点も展示した。 珠玉のような詩篇と細密な原画は見逃せない。独自の制作手法と表現を模索し、安易な着彩による水彩画とは一線を画した 格調の高い絵画世界を満喫できる二人展と自負している。
 また、常設の1階中村善策記念ホールでは「中村善策名作選 故郷小樽をみつめて」のタイトルで 油彩作品20点を展示している(2014年5月11日まで)。1931年制作の「冬の運河」をはじめ、中村作品には めずらしい女性の後ろ姿を描き込んだ「けむり」(1937年制作)とそのエスキースのほか、年代を追って 「小樽の祝津港」(1981年)までの風景を堪能できる。
 一方、3階の一原有徳記念ホールでは中村善策記念ホールと同会期に「幻視者 一原有徳の世界4」のタイトルで石版モノタイプをはじめ亜鉛版、アルミニウム、鉄、ステンレスなどのモノタイプなど、大小とりどりの作品合わせて67点を陳列した。
 それぞれ「1960年代のモノタイプ」「有機的形態・オブジェ」「腐蝕版・壁シリーズ」「大版モノタイプ」 「オブジェ」のタイトルでコーナーを設けている。一原ワールド特有の幻想空間を楽しんで欲しい。

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