女流三作家のまなざし
当美術館の開館30周年を記念する特別展の第2弾「女流三作家のまなざし-響きあう色とかたち」展(7月25日-9月22日)が開幕しました。特別展の第1弾「画家たちのパリ」展(5月23日-7月20日)は、小樽はもちろん広く北海道、さらには日本中央画壇の草創期に活躍した長谷川昇、小寺健吉、工藤三郎の小樽出身者を軸に、明治期から大正期にかけてこの3人が雄飛した芸術の都パリに焦点をあてた「エコール・ド・パリ」の作家たちの作品を展示したものでした。
そこで、続く第2弾もパリにこだわり、パリ遊学を果たした小樽ゆかりの作家という文脈の中で3人の女流作家に登場願うことになりました。油彩 画家のデュボア康子(札幌在住)、マユミ・ウヌマ・リンク(フランス・アルザス在住)と立体作家の平田まどか(札幌在住)の3人です。デュボア康子とマユミ・ウヌマ・リンクの2人は国際結婚した小樽っ子で、平田まどかは祖母が小樽商大でフランス語の教鞭をとっていたという縁があります。また、デュボア康子と平田まどかはパリ国立美術大学に学び、マユミ・ウヌマ・リンクもパリのアカデミージュリアンで学んだ経歴を持つ。デュボア、平田の2人は帰国したが、マユミは1985年からフランスとドイツの国境に近いアルザスに住みつき、ヨーロッパ各地の公募展や個展で活躍、パリSNBAソシエテ・ナショナル・デ・ボザール展会員となっている。
さて今回の特別展の出品作である。
全道展会員で独立展会友でもあるデュボア康子は人物をモチーフとする油彩 の大作11点。「呼吸」シリーズ8点のほか「なにを想う」「風にのって」など力強いタッチで作家の心象風景が見るものに迫る半具象。
戸外や室内の立体制作が多い平田まどかは「ランチボックス」のタイトルで白を基調とするリノリウムの床面 とウレタンフォームのオブジェ、そして壁面にステンレスワイヤに紙とステンレス製のランチボックス20数個をつるしたオリジナル空間を構成した。
また、マユミ・ウヌマ・リンクは、鮮烈な赤や黄、青など色彩 豊かな油彩16点を出品。大小自在な作品が壁面を飾り、私はそこにモーツァルトの音を感じてしまう。
会場は平田まどかを中心に油彩2作家のコーナーがバランスよく仕切られた形となり、鑑賞者がじっくり楽しめる空間になったと自負している。美術愛好者の多数の来場を期待しています。
一方、当美術館1階を占める常設の中村善策記念ホールは、特別 展「画家たちのパリ」終了とともに復活、個人所蔵者の寄託作品による「中村善策風景画」展が始まりました(10月18日まで)。特別展・開催中は閉鎖していたため「中村善策を見に来たのに…」という苦情もあった“常設”ファンもいることに驚きました。ゴメンナサイ。現在の「風景画」展は、当美術館に個人所蔵者から寄託されて収蔵されている大小27点を展示しました。2階の特別 展・と合わせて楽しんでください。
ここで51日間の会期を終えた開館30周年記念特別展・「画家たちのパリ」についての結果 報告です。期間中の入館者数は5,684人に上り、開館以来2番目の入りを記録しました。昨年の常設化20周年を記念する「中村善策の全貌」展の入りが4,350人だったので、今回5千人を目標としていたのですが、入館料を過去最高の千円としたことなど不安材料もあったのですが、市内の経済人らを中心とする特別 展実行委員会を発足するなど、市民の支援体制が目標のクリアに大きな力になったものと感謝しています。
また、昨年1年間のアンケート「どちらからいらっしゃいましたか?」調査で、入館者に占める市民の比率が2割5分、つまり4人に1人が小樽市民という実態がわかったため、この比率を「半数は市民に」の目標を掲げていたのですが、これも5割に近い49%に跳ね上がり、大満足という訳です。さらに無料開放としている小中学生の入りが不振だったため、市教委などに学校現場への働きかけを依頼したのが功奏したのか子供たちの声も多く聞かれるようになり、先行きに期待が持てる展覧会になりました。支援者の皆さまに厚くお礼申し上げます。