「海猫屋の時代」展オープン
かつて小樽の街に、舞踏と芸術が交差する熱気あふれる時代がありました。1970年代、旧磯野商店を舞台に誕生した「海猫屋」は、前衛的な舞踏「暗黒舞踏」の拠点として、若者たちの創造力が渦巻く文化の発信地となりました。
暗黒舞踏とは、舞踏家・土方巽が創り出した、身体の奥底から湧き上がる表現を追求したコンテンポラリーダンスです。既存の舞踊界からは異端視されながらも、現在では世界中の舞台芸術に影響を与える存在となっています。
この舞踏の火を小樽に灯したのが「北方舞踏派」。彼らは美術評論家・長谷川洋行や版画家・一原有徳と出会い、旧磯野商店を「海猫屋」として再生。実業家・秋野治郎の協力のもと、シャンデリアやランプが飾られ、舞台衣装も揃えられた空間は、舞踏だけでなく、詩人、写真家、美術家たちが集う文化のるつぼとなりました。
このたび開催される展覧会「海猫屋の時代―70年代小樽、闇が光った舞踏の街。」では、当時のポスターや衣装、家具調度などを展示し、70年代の小樽に息づいていた熱気を肌で感じていただけます。また、現在も小樽を拠点に活動する舞踏手・田仲ハル氏らによる特別公演も予定されています。
「小樽を変えた一つのエポック」と一原有徳が語ったように、「海猫屋」は小樽の歴史の中で、ひときわ異彩を放つ時代の象徴でした。ぜひこの機会にご覧ください。
苫名 真