市立小樽美術館 市立小樽美術館協力会

KANCHOの部屋

「評論家と版画家の交流―酒井忠康への手紙」展オープン

 一原有徳(1910-2010)の才能をいち早く認め、国内外にその作品を紹介したのは神奈川県立近代美術館長の土方定一(1904-80)でした。美術評論家としても知られる土方は折節に助言を与えて一原を鼓舞し、持ち前のチャレンジ精神を引き出しました。土方の衣鉢を継いで同館館長となり、日本を代表する美術評論家となった酒井忠康氏もまた一原の作品を高く評価し、大規模な個展を自館で開催するなど、その制作活動を力強く後押ししています。

 酒井氏が小樽に近い余市町出身であり、また叔父の山本茂が一原と同じ小樽貯金支局に勤める美術仲間であったことも二人の関係をいっそう親しいものとしたようです。酒井氏が世田谷美術館長に転じた後も交流は続き、多くの書簡が二人の間に交わされました。70通にも及んだ一原からの書簡を酒井氏は長年大切に保管されてきましたが、このたび一括して当館に寄贈いただくことになりました。「評論家と版画家の交流―酒井忠康への手紙」展はこれを記念して書簡の一部を公開、二人の交流と一原の作風の変遷を紹介するものです。書簡の文面からは一原の制作に対する真摯な姿勢とともに、30歳も年下の酒井に対し、丁重にアドバイスを請う謙虚な態度が伝わってきます。

 会期中には酒井氏の従兄妹で一原とも交流のあった現代美術家の池田緑氏による講演会が予定されています(1116日(土)午後2時)。ぜひご来場ください。

苫名 真

 

 

 

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