市立小樽美術館 市立小樽美術館協力会

KANCHOの部屋

アンリ・ルソーと素朴な画家たち

 小樽市が平成22年度事業として取り組んできた市立小樽美術館・文学館の再整備工事(総事業費1億5千万円規模)が年度末に完了、築後60年も間近の施設(旧小樽地方貯金局=小坂秀雄設計)は美術館・文学館の専用施設に特化されて一新した。このリニューアルを記念する特別展「アンリ・ルソーと素朴な画家たち~いきること・えがくこと」(5月21日ー7月10日)も終幕を前に入館者の姿が増えている。
 この展覧会は世田谷美術館(東京)のコレクションによるもので、財団法人「地域創造」の助成を受けて全国4カ所を巡る共同巡回展として企画された。小樽会場を皮切りにこの後、千葉県市川市の芳澤ガーデンギャラリー、岡山県笠岡市の市立竹喬美術館、そして愛知県春日井市の文化フォーラム春日井へと会場を移すことになっている。「地域創造」の肝入りによるこの「市町村立美術館活性化事業」は今年度で11回目を数える歴史を持つが、小樽が加わったのはこれが初めてのこと。
  さて、この特別展は世田谷美術館が開館当初から問い続けてきた「芸術と素朴」のコレクションから借り受けた45点を展示した。「正規の美術教育を受けず、理論や技術とは無縁に、描きたいという心の衝動に従って作品を創造してきた画家たちを“素朴派“と呼んできた」が、その代表格とされるのがアンリ・ルソー(1844ー1910)である。パリ市税関吏という正業のかたわら40歳頃から絵を描き始め、ピカソや詩人のアポネールらに注目されて世界的画家の地位 を得た。美術批評家で画商コレクターでもあったヴィルヘルム・ウーデによって見い出され、その後、アンドレ・ボーシャン、カミーユ・ボンボワ、セラフィーヌ・ルイ、ルイ・ヴィヴァンらの画家たちが素朴派の仲間入りを果たし、その波はフランスからヨーロッパ、アメリカへと広がる。今回の展示には日本から山下清、谷内六郎、塔本シスコ、久永強ら4人の作品が並んだ。面白い彫刻家としても知られるフェルナンド・ボテロの大作油彩画「アダムとイヴ」はボテボテの男と女が描かれ圧観だ。
 「アンリ・ルソーと聖なる心の画家たち」「素朴派の広がり」「近・現代美術と素朴」の3章立てで合わせて27人の世界の画家たちが紹介され、しっとり落ち着きをみせる展覧会になったと自負している。

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