市立小樽美術館 市立小樽美術館協力会

KANCHOの部屋

木嶋良治展

keiji-kijima[1] みなと街小樽に生まれ育った画家、木嶋良治の画業をたどる特別展「心の原風景―風土への賛辞 木嶋良治展」(5月26日~7月29日)は、その作品群がもたらす静謐な品格と堅牢かつ濃密な質感で会場を訪れる絵画愛好家の目を楽しませている。
  小樽ゆかりの現役作家に登場願うシリーズ「小樽へ結ぶ現代の風貌」の第1弾で、木嶋良治の次には8月4日から小樽の朝里川温泉にアトリエを構える美術作家阿部典英の「心の原風景―海への回帰 阿部典英展」(~9月17日)が第2弾として続く。
  木嶋良治展には1974年制作の「幣舞橋」から2012年制作の最新作「雪ぐもり」まで、油彩の大作39点が壁面を飾った。さらに小展示室 にも「北浜」「紋別の海」「石狩川河口」「小樽港」などの小品10点も添えられ、所蔵の欲求を誘っているよう。
  故郷小樽やオホーツク沿岸、釧路の海辺や川など北海道の風景をモチーフに描き続けてきた。その作品のなかで特に小樽運河は、大学入学前に 結核で胸を病み休学中に観察を重ね、その時代に脳裏に焼き付けた風景が制作の強い動機となっている。運河に落ちる建物の影は、鏡に映ったように美しく、年月を経てよどんだなかに繊細な美を発見したよう。
  運河からやがて1970年代に至って、水と建物のある風景を描き始め、水面に映る影は水そのものの色と反射で映り込んだ建物などの両方の色が現れる。影はその時々の自身の心のあり様を反映したものか。
  30歳代後半からイタリアなど長期海外取材や道東への旅を重ね、モチーフの広がりを見せ、テーマとしての「水辺に落ちる建物の影」や「雪の家並み」を描く画面は緻密に構成され一層完成度を高めていく。
  画歴では、半世紀にわたる北海道美術協会(道展)への出品、個展の開催など北海道画壇の中心的存在であるだけでなく、高等学校での美術教育の先頭に立って活躍し人望を集め、それらの実績を認められて2007年札幌芸術賞を受賞している。現在は札幌市南区藤野在住。

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