「全国美術館会議」
5月25、26日と名古屋市で開かれた全国美術館会議(略称・全美)に出席してきました。全美は昭和27年に設立され70年の歴史を持つ最古最大の美術館横断組織です。現在の加盟館数は約400。全国の主な美術館をほぼ網羅しています。
実は全国の美術館が参加する組織がもう一つあります。美術館連絡協議会(略称・美連協)というのがそれで、こちらは昭和57年に発足した全国約150の公立美術館が名を連ねる組織です。美術館の活動助成や学芸員の海外研修補助(私も若い頃お世話になりました)、また加盟館による共同企画の実施など、公立美術館とその学芸員にとっては大きな支えと励みになる活動が行われてきましたが、残念ながら2021年度末をもって主な業務を停止。実質的には現在、全美が唯一の業界団体となっています。
ところで、施設の老朽化、予算の削減、コロナ禍による観覧者数減少など全国的に美術館を取り巻く状況は厳しさを増しています。また展覧会収支の改善や文化観光推進が強く求められ、大勢の来館者が望めない「地味な」展覧会が開きにくくなってきています。幸い当館では小樽の美術を検証する地に足のついた展覧会活動を継続していますが、このままでは美術館に求められる本来の役割―特に公立美術館においては地域の美術活動の記録や継承、振興がじゅうぶんに果たせなくなるおそれがあります。
こういう時代であるからこそ、美術館同士の横のつながりは大切です。全美では美術館の原則や行動指針を定めるほか、博物館法の改正や著作権使用料改定にあたり、文化庁に要望書を提出するなど美術館を代表して積極的に声を上げています。また、いくつもの研究部会や委員会に分かれ、それぞれが活発に活動しています。先頃の石川県珠洲市を震源とする地震に際してもただちに災害対策委員会による関係各館の情報収集が行われました。当館は小規模館研究部会に参加しており、以前本欄でご紹介したとおり(2022.9.22)、昨年、全国から15館が参加する研修会・会合を小樽で開催しました。
今後もこうしたつながりを通して現在の美術館が置かれている状況を的確に把握し、あるべき姿をたえず確認しながら、地域の公立美術館としての小樽美術館の使命をしっかり果たしていきたいと思います。
苫名 真