美術のなかの“生きものたち”
― 人は地球上のあらゆる生きものと共生し、その関係は古くから絵画、彫刻、工芸などさまざまなジャンルの美術に表現されてきました。美術家にとって「命あるもの」は重要なインスピレーションの源であり続けています。
飼い犬や飼い猫、小鳥などの小動物は、人の親しい友であり、大切な家族の一員として、美術家たちの制作の題材になり、古くから人々の生活や労働にかかわってきた馬、牛などの動物たちもまた、生活風俗のテーマで表現されることの多い生きものです。
一方、そうした日常から離れて、人間が住むことのできない海の中の生物や、現実には存在しない想像上の幻獣を生みだして描いた作品もあります。美術作品には、生きものへの愛情が込められているだけではなく、ときに声高ではないけれども風刺を込めた擬人化や、社会への批判を込めて表現される場合もあるでしょう。―(企画展パンフレットより)
今回の企画展「美術のなかの“生きものたち”」(~4月17日)は上記の主題をコンセプトに、北海道ゆかりの美術家を中心に、油絵、版画、彫刻、絵本の原画などにあらわれた生きものたちを題材とした作品を選びだしました。出品作家は故人がほとんどですが、上野山清貢、浦久保義信、小川原脩、かつやかおり、金子誠治、河野薫、国松登、小寺健吉、小島真佐吉、渋谷政雄、須田三代治、高森捷三、竹部武一、手島圭三郎、鳥居敏文、中野五一、中村善策、藤本俊子、水谷のぼる、宮川魏、横川清次の21人で、当館2階展示室に合わせて42点の作品群を展示している。
多用な表現スタイルと作例により、生きものたちに託された作者の思いを感じていただければ幸いです。また、市立小樽美術館に収蔵された新しい作品や意外なコレクションを知っていただく機会でもあります。
一方、1階の中村善策記念ホールでは「小樽洋画研究所と中村善策」をテーマに大正期から昭和初期の小樽画壇を形成した先人の三浦鮮治、兼平英示、工藤三郎、山崎省三、谷吉二郎、加藤悦郎、大月源二ら中村善策の仲間たちの作品13点と中村作品12点(いずれも当館コレクション)を展示している。
また、3階の一原有徳記念ホールでは「幻視者 一原有徳の世界7」のタイトルのもとに、一原を美術の世界に導いた須田三代治の作品9点と一原有徳の作品26点(いずれも当館収蔵品)を展示している。記念ホールの展覧会期は7月3日まで。
私事になりますが、小生は2006年4月に当館館長に委嘱されましたが、今年で満10年となり、退任を決意しました。長い間お世話になりました。お力添え頂いた皆さまに心より感謝申し上げます。
佐藤敬爾